第28回 夏夜

気が付いたらベランダにいた。

今日は一日中うだるような暑さで、帰宅してからは一日クーラーの利いた部屋にこもっていた。

深夜二時、流石に涼しくなっている。

心地よい夜風を浴びながら、思い惚るとしよう。

 

東京の夜は明るく、星なんてろくに見えやしない。明るくも、しかし見渡す限り町は眠っている。奇妙な感覚である。

さて、それでもうっすらと一部は見えるのだ。首を傾け真上を仰ぐ。夏の大三角だろうか。ひときわ輝く三つの星が配置されていた。目を凝らすこと数十秒。星の形はよく分からない。惚けて見ていると、空の広さに気付く。

そう、忘れてしまいがちなのだが、空は広いのである。それに比べて自分のなんと矮小なことか。大いなる存在に思いを馳せ、自己と同一化することで今の悩みが極めて馬鹿馬鹿しくなってくる。

「俺たち生き急ぎ過ぎなのかもな」

学科同期の声が妙に頭についている。そうかもしれない。平均的な寿命で見たら我々はようやく1/4を終えた程度らしい。健康寿命などを勘案しても、まだまだ折り返し地点にすら立っていない。

 

しかしそれでも、私が生きたいのは、生きなければならないのは「今」なのだ。

「今」の期間に幅こそあるものの、それ以外の生き方はまだ模索している段階だ。