第24回  objective point of view

ふと目を覚ますと私はバスに乗っていた。

がたごとと振動を伝える窓の外に目をやると、もう少しで夕日が山の端にかかろうとしている。

 

......?ここはどこだ?私は何をしていたんだっけ......?

必死に記憶の糸を手繰り寄せる中、手元に観光パンフレットと参拝証、そして御朱印が握られていることに気付く。

そうだ、私は今日○○市の××神社に観光に来ていて、それで......それで?どうしたんだっけ?

新たな疑問が浮かぶ。他に手掛かりがないか身の回りを探ってみる。スマホがあった。これならば。

パスコードはなぜか思い出せないが、幸い顔認証のため労せず開くことができた。いつもは何か煩わしく感じているところもあったはずなのに、今日に限ってはネガティブな印象が一切ない。かすかな違和感を感じつつもあまり気にすることなくSNSをチェックしていく。

LINE。家族に向けても友人に向けても旅行の連絡を一切してない。家族にはコロナ禍だから心配をかけたくないのと、友人にはわざわざLINEするほどでもないと考えていたのだろう。特に手掛かりはない。

Twitter。アカウントを一つひとつ遡ってみる。あった。比較的大きな大学垢で12:00に切符の写真を載せて、出発報告のツイートをしている。そのあとは何も呟いていない。縮小垢の方はどうか。11:36「絶起」という短いツイートがあった。どうやら私は元々観光の予定を立てていたにも拘わらず、予定を3時間ほど遅らせることになってしまったらしい。とは言えそれでも旅行を敢行するのは我ながら流石だが。

 

左手首の時計は16:03を指していた。あと10分ほどで目的の神社の最寄り駅に着くらしい。急いでいけば間に合う距離だと考え、私は荷物をハンドバッグに収納した。

右ポケットに入れたICカードをタッチし、唯一の乗客としてバスを降りる。ここでも何かひっかかりを覚えたが、特に気に留めない。バス停を後にし、早く目的地へと向かわなければ―――。

よし、目的地へとつながる道を見つけた。一方通行のここをまっすぐ行けばたどり着くらしい。

ええと名前は、あれ、ついさっき見たはずなのに思い出せない。確か、うーんと、ああくそ、まぁ後で確認すればいい。

 

周りに人はいない。高校卒以来の全力疾走で一本道を駆けていく。

さぁ着いた。

 

ネットでしか見たことのないその神社は、日光や奥州平泉のように豪華絢爛ではなかっけれど、過酷な海に鍛えられた芯の強さを醸し出していた。質素の中にある侘び寂びのようなものであろうか。

この雄大な光景を見れただけでも、この旅行に意味はあっただろう。幾多の名勝も何かはせむ。

 

次の瞬間

 

日が隠れ、気温がの変化に背筋が反応する。さっきまでの美しさは姿を変え、印象はがらりと一変する。逢魔が時とはよく言ったものだ。

今すぐに立ち去るべし。誰かがそう囁く。

帰りのバスまで時間がない。私は振り返らず、順路に沿って一本道をそのまま進む。

 

歩いて、歩いて、歩いて、走って―――――――――――