第32回 道祖神の招きにあいて

1年に何回か、旅行ではなく旅に出たくなる時があります。

中身をしっかり決めて、計画的に行動する前者は目的から行動が導出されます。青春18切符はこの観点から言えば最悪の代物でしょう。新幹線の快適さには到底及ばないし、コスパでは高速バスに劣ります。しかし、行き当たりばったりで進んでいく(と私は定義している)後者、この魅力を存分に堪能するためには最高のツールとなり得るのです。

旅はほぼ確実にトラブルに巻き込まれます。発車時間ギリギリまで空かない個室トイレに気を揉み、また遅延ひとつで大きく狂いかねないタイムスケジュール、座れるかどうか分からない次の電車など、不安の種は尽きません。 (今、初っ端から熱海行きの電車が遅延しています)

しかし、だからこそ一つだけ空いている席を見つけた時の喜びはひとしおですし、タイムスケジュールなんて狂って元々だと割り切って電車を柔軟に変更することもできます。また新幹線よりゆっくりとしていて、高速バスより開放的な鈍行列車からは普段以上に周囲の風景が目に映り、地形や地名に思いを馳せられるというものです。普段の不安やマイナス面がそのまま醍醐味に転換する倒錯的な魅力を知るには、百聞より一体験すべきでしょう。

事前に何も決めずにぼんやりと。長期休暇のお供に、ご一考してみてはいかがでしょう。

第31回 塵も積もればなんとやら

 

雀豪2の座に戻ってきました。

前回昇段した際は上の段の恐怖から金の間に入り浸ってポイントを稼いでいたので、玉の間のみで昇段した今回は大きな達成感があります。

 

 

気付けば対戦数も600(!)に達しています。その成績はこんな感じ。

 

分かりにくいですね。もう少し前の記録と比較してみます。

 

 

あまり変わっていないように思われるかもしれないのですが、平均順位はすこーしずつ上がっています。左列の順位を見ると、直近200戦の4位率は21.51%と前半4大戦から下がっており、ラスのペナルティが厳しい雀魂のルールに適応できるようになったのかなと思います。

そのラス回避を支えているのが右列の放銃率であり、直近200戦では11.49%となっていました。

反対に立直率、和了率は下がっていますね。守りを意識するようになったため、当たり前と言えばそうなのですが、今後は押し引きの見極めの更なる進化、立直を受けた際に活路を見出し回し打ちできる技術、効率に合った鳴きや打牌選択を身に付けていきたいですね。

 

 

 

 

 

第30回 砂嵐

さいころ、実家の布団で床に就いていた私は、よく耳鳴りを経験した。ザー、ザーというその音は、目を瞑った私には起床時のそれよりも敏感に感じられて、まるで砂嵐のようだと思っていた。意識を集中すると、気のせいか徐々に大きくなる砂嵐は、目を開けるとどこかにいってしまう。その得体の知れなさから、音がある一定の大きさを超えたらハッと目を覚ますのが当時は常であった。

 

しかし、子供の好奇心は往々にして恐怖心の先に立つ。中学2年生のある休暇、私はこの砂嵐の先を聞いてみることにした。

 ザー、ザー......ザー、ザー...... ザー、ザー......ザー、ザー......

 

まだ小さい。音が徐々に大きくなるのをじっくりと待つ。

 

 ザー、ザー...... ザー、ザー......ザー、ザー......

 

音の大きさが何らかのライン上にあるのを直観する。目を開けたい衝動を抑えて集中して目を瞑る。

 

  ザー、ザー、ザー、ザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザザザザザザザザザザザザザ............

 

気付いたら私は元の布団の中にいた。隣のリビングでは電灯がついたままであり、就寝前と何ら変わらない光景が広がっていた。ただ一つ、人の気配が全くしないことを除いては。

隣の部屋にいたはずの家族に呼びかける。しかし、返事はない。違う、声が出せないのだ。何とか声を出そうと喉に力を入れる。腹に力を込める。徒労だと気づくまでに時間はかからなかった。

次に何とか布団から起き上がろうとする。幸い、体は何とか動くようである。しかし可動範囲が恐ろしく狭い。数センチ持ち上げただけで動かなくなる四肢は、何度も布団と宙を行き来した。

周りの環境と体が異常をきたしている中、意識だけは鮮明であった。何とか立ち上がらねば。そんな焦燥に駆られ、体を無理やり動かそうとする。

床に押し付けた左腕に力を込めて、込めて、込めて――――――ぐるん

瞬間視界が回転した。まるで上からドスンと落ちたかのような錯覚を覚えて覚醒した場所はまた元の布団の中であった。体は、動く。眩暈のようなものを感じ、ふらふらとリビングに行く。母がちょうど明日の弁当を調理していた。

自分のいた寝室で何か違和感はなかったか尋ねるが、普段通りだったという。ただの変な夢であったのだろうか。しかし。「でもそういえば」母が付け加える。「あんたついさっきまで布団にもトイレにもいなかったんだけど、どこにいたの?」

 

かくして私は元の世界に帰ってきたのである。それ以来、砂嵐には遭遇していない。

 

 

第29回 肩の荷を取り去って

為せば成る為さねば成らぬ何事も成らぬは人の為さぬなりけり

 

江戸時代後期の米沢藩主である上杉鷹山が詠んだこの歌は、人間の意志が持つ実現力を示している。

 

そう、やる気さえあれば三日で10000字の小論文を書き上げることも可能なのである!!!(松岡修造ヴォイス)

いや~やっとクソ重課題から解放されました。つ”か"れ"た"。やっぱり授業はちゃんと聞いて議論に参加しておくものですね。過去の私、GJ。

肩の荷が下りて緊張が切れると、知らず知らずのうちに蓄積した疲れが負債となって押し寄せます。振り返れば今年は就活、卒論、サークル役職などの対応に追われ、アッという間に半年が過ぎ去っていました。

 

諸々がひと段落ついた今(卒論君「おいこれからが本番だが?」)、久々に何も懸念せずに休暇を満喫してみたい。そしてせっかくなら新しい体験をしてみたい。

私の足は自然とある場所に向かっていました。――海産物の聖地、築地市場です。


https://digjapan.travel/blog/id=11161より

 

炎天下の照りつける日差しに耐え、目的のアーケード街に入ります。そこに広がっていたのは別世界でした。
一つ道路を挟んだ向かい側には都会の街並みが広がっているのに、ここはどこか地元に似ていて、懐かしさを覚えます。興味深いギャップに惹かれながら足は奥へ奥へと進んでいき、そしてある店の前で止まりました。

 

https://lineblog.me/fallindebu/archives/4708424.htmlより

扉を開けると大将の穏やかな、しかし貫禄のある声が迎えます。
カウンターに通され、注文を済ませて待つこと10分、いよいよ宝石のような海鮮丼とのご対面です。

 

ウニイクラホタテ丼

いやつっっっっっっっっよよ

写真ではうまく伝わらないかもしれないのですが、一つ一つの輝きが半端じゃない。艶が抑えきれない旨味を醸し出しており、食欲が増幅されていくのをヒシヒシと感じます。

 

さて食べm......うっっっっっっっっっま

ぷっくらと張ったホタテ、プァンと弾けて生命力の凝縮された旨味を伝えるイクラ、これでもかとろけるウニ、その破壊力たるや言語に絶します。

 

そんなこんなで帰ってきたわけですが、まだ夕方か。気温も落ち着いてきたし、もう一回ぐらい外出してみようかな。

 

 

 

 

 

第28回 夏夜

気が付いたらベランダにいた。

今日は一日中うだるような暑さで、帰宅してからは一日クーラーの利いた部屋にこもっていた。

深夜二時、流石に涼しくなっている。

心地よい夜風を浴びながら、思い惚るとしよう。

 

東京の夜は明るく、星なんてろくに見えやしない。明るくも、しかし見渡す限り町は眠っている。奇妙な感覚である。

さて、それでもうっすらと一部は見えるのだ。首を傾け真上を仰ぐ。夏の大三角だろうか。ひときわ輝く三つの星が配置されていた。目を凝らすこと数十秒。星の形はよく分からない。惚けて見ていると、空の広さに気付く。

そう、忘れてしまいがちなのだが、空は広いのである。それに比べて自分のなんと矮小なことか。大いなる存在に思いを馳せ、自己と同一化することで今の悩みが極めて馬鹿馬鹿しくなってくる。

「俺たち生き急ぎ過ぎなのかもな」

学科同期の声が妙に頭についている。そうかもしれない。平均的な寿命で見たら我々はようやく1/4を終えた程度らしい。健康寿命などを勘案しても、まだまだ折り返し地点にすら立っていない。

 

しかしそれでも、私が生きたいのは、生きなければならないのは「今」なのだ。

「今」の期間に幅こそあるものの、それ以外の生き方はまだ模索している段階だ。

第27回 無題

以前読んだ本に次のようなことが書かれていた。

曰く「嘘のコツとは、真実をベースに誇張を薄く足していくことだ。ストーリーを細部まで念入りに積み上げ、あらゆる角度からの質問を想定し対策する。そして何よりそのフィクションを自分自身に暗示し、自らも欺き通せ。さすれば嘘は誠と成らん」

 

嘘が誠になるということはどういうことだろうか。記憶や意識が改変されたということを意味しうるのだろうか。勿論人間の記憶というものはそう簡単に書き換えできるものではない。事故や病気でもないのにある日突然違う人に生まれ変わるということは、荒唐無稽のようにも思われる。

しかし、自分に嘘の記憶を植え付け続けるうちに、それが本当なのではないかと錯覚することは必ずしも否定できないだろう。元来、人間の記憶というものは不確かなものである。交通事故の映像を被験者に見せた後に車の速度を訪ねる実験においては、質問文に含まれる衝突時の音によって、回答が大きく左右されるのは有名である。そして時とともに錯覚だという意識が徐々に薄らいでいき、潜在意識下に沈みこんでいく。この時記憶が改変したといえるだろう。

そして、潜在的な思考は行動に顕現する。無意識の行動が習慣化し、また他人の認識に影響を与え、ついには環境を動かしうるならば、嘘が自らに適合する形で現実の改変をもたらしたことになりうるのではないか。このとき嘘は誠になるのである。

 

人生においては、自分のありのままの姿を見せることを避けなければならないライフイベントが少なからず存在する。自己と否応なしに向き合う中で、自らのパーソナリティへ逃避・諦観・妥協・改善・改変など様々な対応をとることになる。

都合の良い記憶を作成する中で、自己は改変されていく。社会から与えられる常識や規範という型に曖昧で漠然とした何かを流し込み、社会人が生成されていく。そうやって社会に合わせて変化していくような感覚に、どこか安心感を覚えつつも、寂しさと得も言われぬ恐怖を覚えるのである。

 

なんだこれ?

第26回 せんたく

皆さん、こんにちは。

最近何かと忙しい(実際には時間の使い方が死ぬほど下手)なオイスです。

さて、今日は久々の休日です。昨日バイトを7時間近くましたが、その分今日は遊んでやりますわ。

さて起床、時計は11時を指しています。ウウンもう午前中が終わろうとしている。この世はなんと非情なんでしょう。そんな愚痴を言っても一人。眠たい体に鞭を打ち、溜まった衣服を洗濯機にかけます。洗濯機をかけている30分、何かを始めるには短すぎるんですけど(決断コストもあるし)、何もしないのには長すぎるんですよね。ちょうどいい時間の使い方はなんでしょう。

 

洗濯を終えるともう12時、ようやくお出掛けです。今回の最初の目的地はこちら↓

ntsnjk.tokyo

 

 


「姫様、拷問の時間です」という、最近ハマった作品があるんですが、ちょうどいまコラボカフェをしているとのこと。これは神の御宣託に違いない。そんなこんなではるばる新宿まで遠征です。

ちなみに当該作品はハートフル日常系拷問漫画です。荒んだ心に染みわたります。(これにはアケメネス朝もニッコリ!)暇だったら是非読んでみてね。

shonenjumpplus.com

 

 

さて入店です。

 

う~ん可愛い。

これには独歩君もニッコリですね。

それでは注文です。

 

今回頼んだのは魔界の動物エミルブさんのお肉をソテーにしたものと、トーチャー(ポスター群の右にいる悪魔)をイメージしたドリンクです。

いやね、正直舐めてました。おうおう、コラボカフェなんて雰囲気でごり押してくるだけやろ?ってね。食べてみてビックリ、ほっぺたが落ちるくらい美味いんです。うだるような炎天下で乾ききった喉に、染みわたるジンジャエール(をベースにしたもの)と言ったら。柔らかく、一噛みごとに肉汁が染みだすエミルブの濃厚さと言ったら。たまんなかったです。

常連さんによると、どうやらこのお店では料理に非常に定評があるとのこと。店員さん曰く、コラボしているアニメを知らなくとも、ご飯を食べるためだけに来る方もいるようです。料理もボリューム抜群で、今回は頼まなかったのですがカツカレーはカツがまるまる一つ載りますし、ラーメンに至ってはライスもつくようです。恐るべし。

今回はコラボ商品にアルコールはありませんでしたが(曰く、対象年齢層が低いため、子供も来ることをケアしたとのこと)、他の作品だとガッツリお酒も出るらしいです。また行きたいですね。そんなこんなでおいしい料理に屈し、交流ノートに秘密を書いたら次の目的地へ。

 

といっても特にあてもなく彷徨っていたんですけどね。ちょうど近くの花園神社で縁日があったので行ってみました。大分昔に寄ったときは掘り出し物の展覧会をしていて、珊瑚かなんかの綺麗なアクセサリーを買ったりもしたのですが、どうやら今回は出店だけのようです。気温も相まって、一足先に夏祭り気分を楽しみました。境内の喧騒に、日常が戻りつつあることを実感します。

爽やかな新緑

 

さて、お次は美容院へ。身だしなみはとても大切ですからね。シャンプーってなんであんなに気持ちいいのだろう?脳の疲れが取れた気がします。「普段頭をちゃんと使っていますか?」とかいうクソリプはNG。

 

大分さっぱりしたところで、お次はヨドバシカメラへと。新しい腕時計を物色したくなったのです。とは言え手ごろな値段かつデザインが気に入ったものを探すのは難しい。偶に気に入ったものがあっても6桁ではさすがに手が出せません。もう少し金銭に余裕ができてからにしようね。余談ですが、「父の日のプレゼントに最適!」という広告付きでウン十万円の時計があちこちで売られていました。インフレーション怖いなぁ。

 

そのままの足で向かった先はゲーセンです。一時上達しないのが嫌になって長いこと避けていたのですが、久しぶりにすると面白いですね。洗濯機、厨二、オゲンキ、輪などなど。以前頻繁にプレイしていた曲も、そうでない曲も懐かしさを感じながら堪能しましたよ。2回ほどで終わる予定だったのが、もう一回、もう一回と伸びていき、気づいたら2時間ほど遊んでいました。

なかでも面白かったのはmaimaiに入っていたArmageddonって曲です。

躍動感のある荘厳な曲で、腕が疲れたころにおかわりとばかりに高速ノーツを追加してくる容赦ない譜面でしたが、非常に楽しかったです。ランナーズハイに近いものを感じていたのかもしれないですね。ちなみに腕は死にました。

 

さて、最後はビックロでお買い物です。ちょうど夏物を補充したいと思っていたので、薄手のジャケットと半袖を一つ購入しました。オフィスカジュアルにも使える落ち着いたデザインの一品だったので大満足です。サンダルも買おうと思ったけど、近くの店にはいいのが置いてありませんでした。残念。

 

そんなこんなで帰宅です。疲れたけど大分充実していました。

様々な体験をしてみたい、という当初の目的は十分に達成できたと思います。

・・・・・・

さぁ、明日からまた大学です。就活も、卒論も、様々な人生イベントが山場を迎えます。私たちは様々な可能性をもって入学しました、しかし、進めば進むほど道は狭くなってくる。いよいよ選択をしなければなりません。

嫌というほど自己に向き合う中で見つけた可能性を突き詰めるか、それとも欺瞞と虚飾を使いこなし、自分にすら嘘を貫き通すか。烏滸がましいのを承知で言いますが、人生ってやつは難しいですね。

 

残り幾許も無いこの時期を有意義に過ごせたらなぁ、と思う今日この頃です。